平生町参加と協働のまちづくり条例(解説付き)

平成24年12月26日
条例第14号

前文

私たちのまち平生は、風光明媚で豊かな自然に恵まれ、先人たちの郷土愛とたゆまぬ努力の積み重ねにより発展してきた歴史あるまちです。

この連綿と受け継がれてきた素晴らしいまち平生を、さらに発展させ、次世代に受け継ぐことが私たちに課せられた重要な使命であることを自覚し、まちづくりを進めていかなければなりません。

しかしながら、本町を取り巻く環境は、急速な高齢化、人口の減少、住民ニーズの多様化等に加え、地域の連帯感及び自治意識の希薄化が懸念されており、従来どおりの町政運営及び地域運営を維持していくことが難しくなっています。

この課題を解決していくためには、町の努力はもとより、様々な活動団体や世代を超えた住民一人ひとりがまちづくりの主体となり、自分たちのまちは自分たちでつくるという自治の精神に基づき、お互いの立場を尊重しながら、それぞれの特性を生かした住民参加と協働によるまちづくりが、これまで以上に求められています。

よって、私たちは、町民憲章の精神にのっとり、誰もがふるさと平生に誇りと愛着を持ち、心豊かに暮らすことのできる元気なまちの実現を目指し、この条例を制定します。

解説

住民の皆さんに、参加と協働によるまちづくりの必要性及び背景について理解してもらえるよう前文を設けました。平生町の特性、条例制定の背景、本町を取り巻く諸課題の解決の方向や今後の平生町がめざすべき姿、いわゆるこの条例の理念を述べています。

「歴史あるまち」とは、縄文時代からの歴史を物語る遺跡(弥生時代の前半に至るまでの貴重な遺物が出土した岩田遺跡、山口・広島両県下では最大の規模とみられる白鳥古墳、全国的にも珍しい女性首長が埋葬された神花山古墳など)も多く、遣新羅使が「可良の浦」(尾国)に舟泊まりしたことを詠んだ「万葉の歌」、「般若姫伝説」に縁のある寺院など、数多くの歴史的遺産があることです。また、本町の中心部である平生平野は、江戸時代に8年の年月と多くの人々の努力の上に行われた「干拓(平生開作)」によって生み出された、本町の誇るべき財産です。

「従来どおりの町政運営及び地域運営」とは、これまで行われてきた行政サービスや公共事業、自治会等が行ってきた清掃活動などです。

「課題」には、前文中に記載されているもののほか、町の厳しい財政状況も含まれます。

「様々な活動団体」とは、自治会、PTA、子ども会、老人クラブ、婦人会、住民活動団体、NPO等で、「世代を超えた住民一人ひとり」は、平生町の将来を担う小学生、中学生及び高校生が含まれます。

「協働」の前に「住民の参加」があるのは、まずは集まって話をしてみる、活動に加わってみる、そこから「まちづくり」は始まるからです。 「ふるさと平生」とは、町民が想う「ふるさと」はもちろんのこと、本町にゆかりのある人が想う「平生」も含まれます。

参考 

平生町民憲章は以下のとおりです。

わたくしたち 平生町民は、ふるさとの美しい自然と歴史をうけつぎ、
明るく住みよいまちづくりを目指して、次のことに努めます。

わたくしたち 平生町民は

1 自然を大切にし 環境をととのえ 美しいまちをつくります

1 スポーツに親しみ きまりを守り 健やかなまちをつくります

1 思いやりと 感謝の心をもち 温かいまちをつくります

1 勤労をとうとび 活力にみちた 豊かなまちをつくります

1 文化を創造し 若い力を育て 伸びゆくまちをつくります

(昭和60年11月2日制定)

第1章 総則

目的

第1条 この条例は、住民の参加と協働によるまちづくりを推進するための基本的事項を定めるとともに、誰もがふるさと平生に誇りと愛着を持ち、心豊かに暮らすことのできる元気なまちを実現することを目的とします。

解説

本条では、この条例の目的を明らかにしたもので、条例に規定している基本的事項とともに、この条例が何を目指し、実現しようとするものかを規定しました。

定義

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、次のとおりです。

  1. 住民 町内に在住する者及び在勤し、又は在学する者並びに町内で事業及び活動を行う者又は団体をいいます。
  2. 町 町長その他の町の執行機関をいいます。
  3. まちづくり 誰もが心豊かに暮らすことのできる元気なまちをつくるための取組をいいます。
  4. 参加 まちづくりに自主的に関わり、行動することをいいます。
  5. 参画 町の政策立案から実施及び評価までの各段階に主体的に関わり意見を表明し、及び提案を行うことをいいます。
  6. 協働 住民及び町が、地域の課題解決に向けて、それぞれの役割を認識し、互いの立場を尊重し、協力することをいいます。

解説

本条では、本条例で用いる基本的な用語の定義を規定しました。

第1号では、第四次平生町総合計画での用語の定義に基づき、平生町在住者のみでなく、平生町に関わるより多くの人々や団体などの協力や連携が必要であるという認識から「住民」の定義を幅広く捉えています。

第3号の「まちづくり」とは、第1条の目的を達成するため、住民及び町が行動することです。

第4号の「参加」とは、地域活動や住民活動などに加わることで、「参画」は「参加」に含まれます。

第6号の「協働」とは、住民及び町又は住民同士が対等な立場で良きパートナーとして、それぞれの持つ特性を生かしながら協力して、個々では達成できない地域の課題の改善や解決に当たることです。

基本原則

第3条 住民及び町は、次に掲げる基本原則にのっとり、参加と協働によるまちづくりを推進します。

  1. 住民は、まちづくりに積極的に参加するよう努めます。
  2. 住民及び町は、自助、共助及び公助の理念に基づき、自らの役割及び責務を理解し、相互に補完し合うものとします。
  3. 住民及び町は、まちづくりに関する必要な情報を相互に提供するとともに、共有するものとします。

解説

本条では、参加と協働によるまちづくりを進めていく上での基本的な考え方やきまりを前文の理念をふまえた基本原則として規定しました。

この条例の基本原則は、『住民の積極的な参加』、『自助・共助・公助(補完性の原理)』の理念に基づく協働によるまちづくり』、『情報の共有』という3つの考え方を示しています。

第1号では、「参加」は協働のまちづくりの基礎であり、住民の積極的な「参加」が協働のまちづくりの第一歩となることを規定しました。

第2号では、協働によるまちづくりの基本的な進め方について規定しました。

まず、自助・共助の理念にあるように「自分たちにできることは何か」を考え、次に公助として町が行うべきことは何かを確認していきます。そして、地域課題の解決や誰もが心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に向けて、まちづくりの主体である住民及び町が相互に協力し、連携してまちづくりを進めていくこととしています。

第3号は、住民及び町がまちづくりに関する情報を提供・共有することを規定しました。

参加と協働によるまちづくりを進めるにあたっては、お互いを尊重し、理解することが重要になります。まちづくりに関する情報は、町からの情報提供だけでなく、住民からの情報提供も必要となります。情報提供・共有は、参加と協働によるまちづくりを推進するためには必要不可欠な前提条件です。

この場合、町は個人情報の保護に関する配慮を基本とし、情報提供や情報共有と同様に個人情報の保護を図ることに努めます。

また、町外からまちづくりに広く参加してもらうための取組みの一つとして「ひらおファンクラブ」があります。住民及び町から様々なまちづくりの情報を発信し、会員と情報共有することで参加及び協働によるまちづくりを進めていきます。

自助・共助・公助(補完性の原理)とは

個人ができないことを家族が助け、家族でできないことを地域が助け、地域でもできないことを行政が担うという自治における基本的な考え方で、問題はより身近なところで解決されなければならないということです。

「ひらおファンクラブ」とは

本町出身者や本町にゆかりのある人が会員となり、ふるさとの状況を知ってもらうとともに、ふるさと平生の応援団として、住んでいる地域の情報や平生町への意見等をまちづくりへ反映させていくものです。
「ひらおファンクラブ」については下記リンクをご覧下さい。

ひらおファンクラブのご紹介

第2章 住民の権利並びに住民及び町の責務

住民の権利

第4条 住民は、まちづくりの主役であり、まちづくりに平等な立場で参加する権利を有します。
2 住民は、まちづくりに関する必要な情報について、知る権利を有します。
3 住民は、まちづくりに関して、意見を表明し、提案する権利を有します。

解説

本条では、住民のまちづくりにおける権利を規定しました。

第1項の「参加する権利」とは、まちづくりにおいては、住民の参加は不可欠なものであり、基本的な権利として規定しています。

「平等な立場で」とは、すべての住民が対等な立場で参加することができるということです。

第2項の「知る権利」とは、参加と協働によるまちづくりを推進する上で当然の権利であり、町は住民に必要な情報を提供していきます。

第3項の「意見を表明し、提案する権利」とは、町の政策等に対し、パブリック・コメント(意見募集)により意見を表明し提案するだけではなく、住民がまちづくりに関して自主的に意見を表明し、提案する権利のことです。具体的な提案の方法としては、電子メール、要望書及び手紙などがあります。

住民の責務

第5条 住民は、第3条の基本原則にのっとり、自らがまちづくりの主役であることを認識し、自主的かつ主体的にまちづくりに参加するよう努めます。
2 住民は、まちづくりに参加するに当たり、自らの発言と行動に責任を持つよう努めます。

解説

本条では、まちづくりにおける住民の責務を規定しました。

第1項では、第4条第1項の考え方から、「法的な義務」として強制するものではなく、住民がまちづくりに積極的に参加して、協働によるまちづくりに自主的・主体的に取り組むことを責務として規定しました。

第2項の「自らの発言と行動に責任を持つ」とは、参加と協働によるまちづくりを推進するためには、自己決定・自己責任の考え方が基本であり、住民は参加するに当たっては、自らの発言や行動に責任を持たなければならないということです。

町の責務

第6条 町は、公正、公平かつ効率的に業務を遂行するための組織体制を、住民に分かりやすく機能的なものにします。
2 町は、住民がいつでもまちづくりに関する提案ができる環境をつくります。
3 町は、まちづくりに関する重要な政策及び計画並びに条例(以下「政策等」という。)の立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、住民に対し分かりやすく情報を提供します。
4 町の職員は、住民がまちづくりの主役であることを常に認識し、全体の奉仕者として、公正、公平かつ誠実に職務を遂行します。

解説

本条では、町及び町職員の責務を規定しました。

第1項では、組織は住民にとって分かりやすく、また地域経営体として機能的なものでなくてはならないということを規定しました。

第2項では、第4条第3項にあるように「意見を表明し、提案する権利」を尊重し、住民の意思をまちづくりに反映させることを目的として規定しました。

第3項では、町が住民に対し分かりやすく情報を提供することを規定しました。

第4条第2項の「住民が情報を知る権利」を尊重するとともに、住民が「まちづくりへ参加する権利」を行使する上での前提条件となるものです。町からの情報提供により、住民がまちづくりに対する興味や意欲を持つことで、情報の共有及び住民の参加が促進され、参加及び協働によるまちづくりが推進されるものと考えています。

ここでいう政策等の例は、以下のようなものがあります。

  • 町の総合計画(基本構想・基本計画)
  • 町の各行政分野の施策の基本事項を定める計画(高齢者福祉計画・行政改革大綱等)
  • 町の基本事項を定める条例(まちづくり条例等)
  • 住民生活に重大な影響がある事業等(全住民を対象とした公共施設の建設等)
  • 審議会その他の附属機関等の委員公募、意見募集制度及びその他の住民の参加に関するもの

また、「分かりやすく情報を提供します」とは、広報紙や町ホームページ等により図表及びグラフを活用するなど、正確で分かりやすい表現を用いたり、他の自治体との比較等を行うなど、住民の視点に立って資料を作成し、情報を提供することです。

第4項の町職員は、住民がまちづくりの主役であることを常に認識し、全体の奉仕者として、その職務を遂行するに当たっては、この条例を誠実に守って職務を行うことを規定しました。

第3章 町政への住民参画及び協働

町政への住民参画の推進

第7条 町は、政策等の立案から実施及び評価までの過程において、住民の参画を求め、これを推進します。

2 町は、住民との信頼関係に基づき、住民からの意見等に対して、誠意をもって分かりやすく説明するよう努めます。

解説

本条では、町政への住民の参画を推進することを規定しました。

町政への住民の参画としては、委員公募、パブリック・コメント(意見募集)、公聴会、参加型検討会(ワークショップ)、住民説明会、住民懇談会及びアンケート等が考えられます。

第1項の「住民の参画」には、町の総合計画の策定及び変更、条例の制定及び改廃や左記に掲げるもののほか、町長が特別に住民の参画を必要と認めたもの(住民生活に重大な影響がある事業等の立案から実施までの過程)があります。

第2項では、住民からの意見等に対する町の説明責任を規定しました。

住民からの意見等に対する誠実な対応は、住民との信頼関係を強化する上でも重要なことです。

委員公募

第8条 町は、審議会その他の附属機関等の委員を選出するときは、委員の一部を住民から公募するよう努めます。

解説

本条では、町政への住民参画の促進を図るため、町が設置する審議会その他の附属機関等(以下「附属機関等」という。)の委員に住民からの公募委員を加えることを規定しました。

附属機関等とは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項に規定する附属機関及び審議会等(住民、学識経験者等からの意見を聴取し、町政に反映させることを主な目的とした、規則、要綱等により設置された審議会、懇談会、協議会等)です。

附属機関等の委員に、公募委員を加えることで、町政への住民の参画の機会の拡充及び促進並びに任命過程を透明化する効果があります。

また、委員を選出するときは、附属機関等の設置の目的を達成するために必要な専門性の確保、男女比率、年齢構成、地域性等を考慮し、幅広い分野から人材を登用することで、住民の多様な意見が反映されるように努めるものとします。

公募の方法については、各附属機関等は、それぞれの目的や内容等も異なるため、応募資格や募集人数等を一律に規定するべきものではないので、その都度、公募要領等を作成し、委員公募を行うものとします。

意見募集

第9条 町は、政策等を決定する前に相当な期間を設け、当該政策等の案を公表するよう努めます。

2 住民は、公表された政策等の案に対し、町へ意見を提出することができます。

3 町は、提出された意見に対する町の考え方を公表しなければなりません。

解説

本条では、町が政策等を決定する前に、住民に対して政策等の案を公表し意見の募集を行い、その提出された意見を反映・考慮するとともに、その結果を公表することを規定しました。

この募集の目的は、町の政策形成過程における公平性及び透明性の向上を図り、住民のまちづくりへの参加及び協働によるまちづくりを推進するものです。実施に当たっては、その都度、実施要領等を作成して、行うものとします。なお、「相当な期間」とは、原則30日程度を想定しています。

協働の推進

第10条 住民及び町は、参加と協働によるまちづくりを推進するため、地域を主体的に運営する推進組織を設置し、その組織体制及び活動拠点の整備等に努めます。

2 町は、参加と協働によるまちづくりを推進するための指針の策定に努めます。

3 住民は、前項の指針に基づき、町と連携し地域の特性を生かしたまちづくりを進めることに努めます。

解説

本条では、参加と協働によるまちづくりを推進するための環境づくりや、住民及び町がつくる指針の策定について規定しました。

第1項では、住民及び町が、参加及び協働によるまちづくりを推進するため、住民及び町が連携・協力し、地域の課題解決に取り組むことのできる地域づくりの活動拠点と、その組織体制や情報発信などに必要な環境づくりを行っていくことを規定しました。

「地域」とは、自治会を基礎とした公民館やコミュニティセンター単位の範囲を想定し、住民の活動のまとまりがあり、機動性もよい範囲と考えています。

「組織体制及び活動拠点の整備等」とは、組織体制づくり、活動(交流)拠点の整備、意識啓発、情報発信、ネットワークの構築、住民の視点を生かしたアイデア(考案・着想)や提案の募集、地域の課題解決に向けて住民と町が同じテーブルで協議する場をつくることです。

第2項では、町がつくる「参加と協働のまちづくりを推進するための指針」の策定について規定しました。

この指針は、様々なまちづくりの主体が公共的な活動を行いやすい環境を整備するため、本条例の施行後に策定することとしています。内容は、公共的な活動を展開する団体への支援、ボランティア意識や住民の社会貢献活動の促進に対する環境づくりを進めるほか、協働の手法など、これからの地域づくりの進め方を示したものです。

第3項では、住民が「地域の特性を生かしたまちづくりを進める」ことについて規定しました。

このまちづくりを進めるとは、住民相互の話し合い、活動やワークショップを通じて地域の将来像や行動計画、役割分担等を明確にし、各地域の特性を生かしたまちづくりを進めていくことです。

「参加と協働のまちづくりを推進するための指針」の策定について

平成25年12月に「平生町協働推進プラン」を策定しました。

平生町協働推進プラン

担い手づくり

第11条 住民及び町は、まちづくりの担い手の発掘及び育成に努めます。
2 町は、住民がまちづくりの担い手となるように、自主的に学び体験できる機会を提供するよう努めます。

解説

本条では、参加と協働によるまちづくりを推進し、様々な地域活動や住民活動を活性化させるためには、「担い手づくり」が非常に重要であり、その人材を発掘し、育てていく必要があることについて規定しました。
地縁による団体(自治会、PTA、子ども会、老人クラブ、婦人会など)や住民活動団体(ボランティア団体、NPOなど)の多くが直面している課題として、『担い手』の問題があります。「参加する人が固定化している」、「活動に参加するためのきっかけがない(始めの一歩を踏み出す機会)」、「コーディネーター(調整・まとめ役)的人材が不足している」などといった声が聞かれます。

第2項では、町が住民に対し、研修会、学習会、講演会やまちづくり講座などの、「まちづくりの担い手」としてのスキルアップを図ることのできる体験・学習機会を提供することについて規定しました。

また、小学生、中学生及び高校生など、本町の将来のまちづくりを担う人材の育成にも努めていきたいと思います。

スキルアップとは

腕前を上げること。技術力を高めること。

第4章 雑則

委任

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定めます。

附則

この条例は、平成25年4月1日から施行する。

お問い合わせ
地域振興課 まちづくり班
〒742-1195 山口県熊毛郡平生町大字平生町210-1
電話番号:0820-56-7120
ファックス:0820-56-7123
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